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古き良き空間に新しい命を吹き込む

2022.05.16

歴史的・文化的な価値を宿す建物を舞台に、熊本ならではの体験と最上級の食を提供する「Premium Table」。通常は完全予約制の特別なプログラムですが、5月22日(日)まで開催中の「第38回全国都市緑化くまもとフェア くまもと花とみどりの博覧会」、4月23日(土)、24日(日)に開催された「第4回アジア・太平洋水サミット」に合わせ、premium table特別編が企画されました。

今回の舞台は、明治時代に建てられた町家を今も大切に守り継いでいる 株式会社野田市兵衛商店さん。季節の室礼に囲まれて、野田珠実会長が自ら熊本県岳間産のお茶を振る舞いました。お茶の時間が与えてくれるもの。稀少な建物を生かし、社会貢献に取り組む意欲。清涼なお茶の香りに癒やされながら、お話を伺ってきました。

心に響くお点前と初

夏の室礼に彩られて

今回、野田市兵衛商店は「くまもと花博」「水サミット」の催しの一環として、通常は社屋やショールームとして活用中の町家を広く開放。「熊本市景観形成建造物」にも指定された歴史的価値のある空間、美しい室礼と熊本県産茶の振る舞いで見学者をおもてなしされました。広間に清々しい空気を運ぶ山椛の大振りな枝、幽玄な掛け軸や「破れ花入」に生けられた初夏の花々。オフィスエムの松村篤史氏がプロデュースした室礼は、野田会長の目に、どのように映ったのでしょうか。

「このような機会に参画することができ、社屋を美しく設えていただいたこと、とても嬉しく光栄に感じています。もともと松村さんとはご縁があり『この場所は、もっと多くの人に知ってもらわないと勿体ない』と仰っていただいていました。いつかは……と思っていましたので、良い機会でしたね」と野田会長。「まずは一服なさって」と、見事なお点前を披露してくださいました。

 「お客様が来られたときは、普段からこの部屋でお茶をお出ししています。仕事の合間ですから、作業着のままですが(笑) お茶を点てる間、いただく間だけは、ゆっくりとした時間を過ごせるでしょう? 忙しない日々だからこそ、美味しいお茶で一息ついていただきたいし、私自身もお点前の手順を無心で追うことによって、心を整えることができますから」と気さくな笑顔が広がります。お茶の時間から生まれる集中と弛みのバランスは、野田会長と訪れるゲスト、双方に良い刺激を与えているのだそう。

先代の遺志を受け継ぎ 歴史ある建物を未来へ

唐人町、辛島町、紺屋今町……。野田市兵衛商店が社屋を構える一帯は、熊本市街地でも古い町屋が残り、風情のある街並みが魅力だったエリア。同時に、2016年の熊本地震により甚大な被害が生じた地域でもあります。修復が叶わなかった建物も多い中、同社の復旧は多くの人に勇気を与えました。「当社も熊本地震で大きな被害を受けました。土壁はすべて剥がれてしまい、柱や梁も損傷。それでも、この歴史的価値を失う訳にはいかないと皆で頑張っていた頃、夫である先々代社長が急逝したのです。何とか復旧してほしいと言い遺されていたので、完成までは無我夢中で駆け抜けましたね。飴色の部分が古い建材を生かしたもの、白木の部分が復旧時に入れた木材です」。先代の生家でもある社屋に向けるまなざしには、深い愛情がにじみます。

地震以前は宮大工の手により、釘を一本も使わずに建てた木造建築でしたが、復旧後は耐震補強のため、柱や金具を駆使。野田会長は「見た目は少し残念な部分もありますが、次の世代まで守っていくためには必要なこと」と前を向きます。

現在、一階部分は本社事務所とショールームの機能を持ち、二階は会長の執務室やおもてなしの場、能楽のお稽古場などに活用されているそう。「以前は耐震性に不安があり、二階は畳を上げて使わずにいました。復旧後はしっかりと対策をしたので、二階も使えるように。これは嬉しいことですね。電車通りに面する一階ショールームは、ギャラリーや喫茶スペースとしても利用できるように造ってあるので、今後どんどん活用していきたいと思っています」

企業の宝が地域の資産になる

Premium Tableは、細川家別邸である泰勝寺跡をはじめ、熊本の歴史・文化を継承する場所を舞台に開催している(株)くまもとDMCがオフィスエムとの共同でおもてなしのプログラムを提案。こういった取り組みに関しては、どのような感想を持たれているのでしょうか。「伝統文化を伝える空間として、古いものを壊さずに守っていくのは街全体の資産として重要なこと。明治時代に商いを始め、今も現役の社屋として動いているこの場所に、気軽に足を運んでいただく機会を持てたことも意義があると思っています。普段あまり接点のない業界の方にも、野田市兵衛商店を知ってもらえるチャンスでもあるでしょう?」

 今後はHD化を促進し、よりスケールアップしたプロジェクトに取り組んでいくとのこと。グループ企業の野田市電子は、熊本県初のSDGs登録事業者となりました。「私たちは馬具商店からスタートし、時代に合わせて変化を続けてきました。これからも、さまざまな事業を通じてグループが連携し、社会のお役に立つことを目指していきます。その一環として、このような文化的な取り組みにも力を入れていけたら」・・・。

 野田会長にとってのお茶の時間と同様、関わるすべての人にとって喜びあふれる活動であり続けられるよう、企業が大切に継承してきた財産を地域の宝として再発見し、楽しみ、皆で守り続けるアクションへとつなげることへの挑戦は続きます。

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